ニュースレター

2009年1月28日

「ニュー プラネット」第2号 緊張性筋炎症候群(TMS)


第1号のニュースレターはおかげさまで好評のようです。今回もわかりやすく楽しい内容であるよう努めましたので、どうぞ最後までお楽しみ下さい。

今回のキーワードは「緊張性筋炎症候群(TMS=Tension Myositis Syndrome)」です。
これは、とても大事なキーワードです。日常ではとても多くみられますが、自分のこととなるとなかなか気がつかないものですから、今回は、「大きな視点で全体を観る」という点に立って、例として「山田さんの腰痛」について考えてみたいと思います。

山田さん(仮名・男性・40歳)は仕事も多忙な会社員。朝は7時には家を出て、帰宅は9時、10時がほとんどの毎日です。日曜日の仕事関連のゴルフで腰痛が出てしまい何とか終えて帰宅しましたが、翌日になっても痛みがひかず来院しました。レントゲン、腰椎MRIにて大きな異常はなく、その結果に山田さんはがっかりしました。痛いのであるから、検査をしたら何らかの原因が特定されて(たとえば椎間板が少しすりへっている、など)次にそれに対しての対応(治療)が考えられると思っていたからです。数日鈍い痛みは続きましたが、痛み止めを一時的に使いリハビリに何回か通院しいくらか軽減したように感じたので忙しさもあり、その後通院しなくなりました。

数ヶ月後、会社の人事関連で大変なストレスが生じ、不安や心配が高まっていた頃、再び腰痛がぶり返しました。ところがタイミングの悪いことに以前に比べて痛みが強く感じられるのです。忙しく会社も休みにくい時期なのに、自分がふがいなく、情けなくも感じ非常に気持ちがめいってしまいました。痛みが強いので、仕方なく診察にいくと、先生は「主流医学の諸検査で大きな異常がない、ということと自覚症状の有無や強弱はイコールではない」といいます。そして、さらに先生はここが重要ですがと前置きして、「痛みが悪化したように感じ健康への自信を喪失したことや、会社での多忙やストレス(過度の心配や不安)などによって、以前からずっと交感神経がスイッチ・オンになっていて、筋肉が弛緩(緩んで休む)する暇がないため生じた、緊張性筋炎症候群(TMS)と言えます。ただし、これは症候群なのであるから、何か特定の病気ではなく、しいて言えば、食事・呼吸・運動・感情や思考のクセなどの全般的なライフスタイルの問題で、ゴルフがきっかけのように思えるけれどそうではなく、自律神経系のアンバランスによる一連の症状といってもよいですね。」と教えられました。

山田さんは、はじめて聞く緊張性筋炎症候群という名称にとまどいましたが、画像での所見が年齢相応ということを知ったことと、確かに症状と自分のライフスタイルに関連がある、という氣がして先生のすすめた本を借りて読むことにしました。

  • サーノ博士のヒーリング・バックペイン-腰痛・肩こりの原因と治療―
    ジョン・E・サーノ著   浅田仁子訳 春秋社
  • 心はなぜ腰痛を選ぶのか-サーノ博士の心身症治療プログラム-
    ジョン・E・サーノ著   浅田任子訳 春秋社

山田さんがこれらを読んでみて初めて理解できたことは、(たとえレントゲン上で何らかの所見が発見されたとしても)自分の腰痛の真の原因は、いわゆる骨や腱や椎間板などの異常によるものではなくて、幼い時から何年にもわたり自分の感情を抑圧してきており、それが当たり前となってしまっていること、「身体よ、しっかり休んでいいよ」と指令を出す副交感神経が働けないほど身体や精神にストレスをかけ続けている、ということでした。

次回の診察で、その点を先生に正直に告げると、先生は次のように言いました。「自律神経にはいざという時、すぐ逃げ・戦うモードの交感神経系(筋肉は収縮して血管も収縮、呼吸は浅くなる→血流は減る→身体は冷える)と身体に対してもう休んでいいよ、とリラックスモードに入る副交感神経系(筋肉は弛緩して血管もひろがり、呼吸は深くなる→酸素や栄養が巡り老廃物は流れやすくなる→からだは温まる)とがあります。この2つの系は自律神経系ですから、自分の意思で直接コントロールすることはできません。身体自体がまわりの状況を読み取って、寝ているときも起きているときも常に対処してくれているのです。しかし、現代の、特に都会で生活している山田さんに代表される多くの人は、たとえ自分が休んでいるつもりであっても身体は「休め」とは受け取ることができない状況にある、といえます。身体は常に緊張モードのスイッチが入ったままで、知らず知らずに全身の筋肉は緊張し、収縮し、肩こりや腰痛、背部痛、坐骨神経痛、などなど広範囲の症状をあちこちに生じることになります。胃腸症状や気分障害、睡眠障害なども同じです。そして、身体と心の働きはつながっているのですから、当然のように感情や思考のクセも相互に影響を与えあっています。これは眼には見えませんがごくごく普通のことです。」

山田さんは、この考え方に共感しました。自分の腰痛はふってわいた「病気」ではなくて、自分自身のライフスタイル、中でも特に運動や気持ちの持ちよう(感情)、呼吸などで大きく変わりうる「身体からのお知らせサイン」だったのだ、と心から思えたからです。

実際、こういう視点から自分の腰痛を振り返ってみると、今回の「腰痛」には大変な思いをしているものの、新たな視点を得ることができたこと、今後も同じようにこのアイデアを応用していけそうだという希望もわいてきて、「腰痛君」と「君」付けでありがたいと思うようになりました。そのうちに腰痛が少しでてきても、あわてふためくこともなくなり、次第にその頻度と痛みの強さは減っていきました。この様子だと、もう腰痛は自分を苦しめる敵ではなく、不調を早く知らせてくれる「相棒」という感じに昇格していて、先生からも筋の緊張(交感神経系のスイッチオンの持続状態)を自覚することや自分の気がつかなかった感情に注意と敬意を払うことをアドバイスされました。
日々の忙しい日常の中で、自分の身体を含めて、本当は何をどう感じているのかを知ることは、はじめ戸惑いがありましたが、「腰痛君」のサインのおかげで、全体的に自分自身をみる機会をもらって、健康状態やライフスタイルは徐々によりよいものに変容してきています。

山田さんは、このように考え方をすこしずつシフトしていき、現在は腰痛は殆どみられていません。ときどき腰の不快感を自覚すると、自分の中でどの項目が不足していたか思い浮かぶようにもなり、通勤に徒歩を多くしたり、感情や思考のクセを見直したり、先生に会いに行って元気をもらったり、時にはそこ(腰痛君)に隠された感情を見つめることもしています。その結果、早めに「悪化を予防」できています。

解決方法としての第1歩は「この事実」を自分が認識することです。
「この事実」とは、

  • 不具合の真の原因は診断病名や画像所見ではなく、ライフスタイル全般による自律神経系のアンバランスの現れであること。
  • 今まで抑圧してきた感情も、その大きな要因となっていること。
  • 運動不足やエネルギー(生命力)の乏しい食生活、浅い呼吸、なども交感神経系の緊張を常にスイッチ・オンとする要因であること。
  • 腰痛→絶対安静→動かさない→腰が悪い→病気というサイクルは延々と続くことになり、当面の回避にとどまっており真の解決にはならず、抑圧した感情や過度のストレスに注意を向けさせない脳(左脳、分析脳、論理脳)の策略にはまっていることになる。

などです。

今回、山田さんの腰痛を例に挙げてわかりやすく書いてきましたが、腰痛に限ったことではありません。ほとんどの不具合は、はじめはごく軽微な症状から始まっており、そこには自覚している・いないに関わらず、「心身の緊張」がほとんど必ず関与しています。
もちろん、病気に対して痛みやつらさを軽減することは大切ですが、真の幸せやウエルネスを考えたときにはこれで終了とするには不足です。真の幸せやウエルネスには人間の心・身体・霊性の全体を見ていく視点が必要になります。そのためには、このようなアイデアを知っていること<智慧>が役にたつことでしょう。このアイデアに慣れないうちは戸惑うこともあると思いますが、そんなときはぜひ診察で心の中にあるものを分かち合ってください。そして、共に真の健康な自分に近づきましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました。では次号もまたお楽しみに!