ニュースレター

2009年9月24日

「ニュー プラネット」第14号 <エクササイズ=体操>と<脳>


朝晩の風も涼しくなり秋を感じる日々となりました。
9月、10月、11月と秋のシーズンは、夏に知らず知らずに「冷え」を溜めてしまったお身体から老廃物、毒素を排出するように心がけることが大切な季節となります。ゆっくりとお身体を動かして身体の内部から温めましょう。

さて、今号は<エクササイズ=体操>と<脳>に関する最新の情報をお届けします。

私が医学部の学生だった頃は、脳や脊髄は中枢神経系なので、一度傷ついたら二度と再生しない、と教科書に書いてあり、そのように習いました。
しかし、科学と同様、医学も日々新しい研究が更新され続けており、私が学生時代に習っていたことの多くは今は古い内容であることが多くなっています。
脳は一度ダメージを受けたら再生しない、というのはもはや古い知識であり、脳は年齢にかかわらず変わりうる、つまり、脳は書き換えられる、というのが今では常識となっています。

脳の働きを高めていく手段に<エクササイズ>は長い間有望視されていたのですが、決定的な証拠が見つからないでいました。
ところが、最近になり、<エクササイズ>が記憶と認知のスピードを改善することによって脳の働きをより高める、という証拠がどんどん集まってきているのです。

まずはネズミの実験で、死の直前までネズミの脳内では新しい神経細胞が誕生していた、つまり、脳は自らを新生し続けていた、という実験結果が得られました。
さらに、回転する車輪で走りまわる運動ネズミ(エクササイズあり)では、運動しないネズミ(エクササイズなし)の2~3倍も多く新生の脳神経細胞が生まれていた、という結果が得られたのです。

さて、ネズミではそうでも、人間の脳を解剖して調べるわけにはいきません。
しかし、脳血流を測定できるfMRIを利用した大きな実験結果が、2007年コロンビア大学のスコット・スモール教授グループから発表されました。
この実験では、21歳~45歳の男女に1日1時間のエクササイズを週4回実行しました。12週が過ぎた頃、fMRIを測定したところ、(ネズミばかりでなく)ヒトでも、脳の神経再生が海馬〔脳の部位で、記憶を司るといわれています〕で起こっていることを示す証拠が得られたのです。
海馬は脳の部位の名称です。誰でも加齢によって脳が少しずつ減少していくのですが、最も顕著に縮小するのが、この海馬です。海馬の縮小が進めば、認知力が衰退して、これが極端に進めばアルツハイマー病や脳血管性痴呆症などが発生する、と考えられています。
しかし、このスモール教授の研究によって、エクササイズによって海馬の縮小を遅れさせることが可能であることが明らかになったのです。
エクササイズによってヒト脳に神経新生が起こることは、この他、イリノイ大学アーバナ校のアーサー・クレイマー教授の研究によっても確認されています。

現在では、脳について研究している脳科学者たちは、ほぼ毎日のエクササイズを欠かさず敢行しているといいます。なぜなら、そのエクササイズこそが脳の神経再生を促すという証拠がたくさん出ているからなのです。

とはいっても、自分でカラダを動かすことがおっくうになっている方も多いと思います。残念ながら日々の診療でも、その点は非常に強く感じます。
でも、あなたのかわりに、私や他の誰かがエクササイズをしてあげる、というわけにはいきません。笑

自分の脳の神経細胞は見えませんが、脳の神経細胞はエクササイズによって新生する、そして、認知や記憶力の維持更新にエクササイズが効果ある、と認められたのですから、これを有効に活用しようではありませんか。

運動がおっくうな方は、まずは是非ご自分にあったグループ・エクササイズから入っていただき、楽しんで、かつ徐々にお身体を動かすことに慣れていっていただきたいと思います。
当院のリハビリスタッフは勉強熱心で、チベット体操インストラクター、ピラテイス・インストラクター、ストレッチポール・インストラクターなども誕生していますので、是非いろいろなエクササイズをお試しいただき、お氣に入りをつくっていただきたいと思います。
エクササイズはひとたび習慣になると、ナイス・エイジングの大きな柱となります。

秋は気候も涼しくなり、運動に適しています。何かエクササイズをはじめようかしらと悩まれている方、是非一度ご相談下さい。お待ちしています!

参考文献;

「脳地図を書き換える」 大人も子どもも、脳は劇的に変わる
生田 哲 著   東洋経済新報社  1500円